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失敗しないペーパーレス化とは?業務プロセス変革の必要性

近年、「働き方改革」や「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の波とともに、「ペーパーレス化」という言葉を聞かない日はないでしょう。
ペーパーレスとは、単に紙をデータに置き換える(電子化)だけでなく、業務プロセスそのものをデジタル前提に最適化し、効率と生産性を向上させることを指します。これにより、情報共有の迅速化、検索性の向上、コスト削減といった多大なメリットが期待されています。
しかし、「紙をスキャンしただけ」「ハンコの画像に置き換えただけ」で、かえって手間が増えてしまったという失敗事例も少なくありません。期待を込めて導入したはずが、なぜか業務改善に繋がらない……その原因は、多くの企業が「紙をなくすこと」を目的化し、「業務プロセス変革」という本質を見失っているからです。
本コラムでは、よくあるペーパーレス化の失敗事例を明確にし、あなたの会社が真の業務改善を実現するための「成功のポイント」を徹底解説します。
ペーパーレス化の失敗事例
先述した通り、実はペーパーレス化には失敗するケースも多々あります。
ペーパーレス化を推進した企業において、「業務効率が変わらない」、「業務効率が悪くなった」、「かえって手間が増えた」、「紙とデジタルの二重管理になった」といった声も多く聞かれます。
これは業務プロセスを考慮せず、ペーパーレス化に取り組んでしまうことが主な原因です。
ペーパーレス化の効果を高めるためには、紙をただ電子化するだけではなく、業務プロセス自体を見直し、変革していくこと(DX:デジタルトランスフォーメーション)が重要です。
以下の失敗事例を見てみましょう。
【Case 1】紙を電子データに置き換えただけ「頑張ったのに報われない」ペーパーレスの落とし穴
「ペーパーレス化」を推進する多くの企業が陥りやすいのが、「紙をなくすこと」自体をゴールにしてしまうパターンです。
長年、大量の紙と手作業で行ってきた帳票業務に対し、工数削減や印刷代節約などの業務効率化効果を狙い、次のような施策を実施しました。
<実施した施策の例>
①大量スキャンによるデータ化
過去の大量の紙書類を全てスキャンし、PDFファイルを作成した。
②手入力によるデータ化
帳票作成のために、紙のデータや取引先の情報をExcelや社内システムへ手入力で転記し、電子的な見積書や請求書を作成。
③電子保管環境の整備
作成した電子帳票を管理するために、ファイルサーバーなど複数の部署間で画面上からアクセスできる基盤を構築した。
<結果>
-かえって非効率になった「頑張り損」の状態-
これらの施策は、「紙を減らす」という目的こそ達成しましたが、業務改善には繋がりませんでした。むしろ次のような新たな問題が発生し、現場の負担は増大しました。
<新たな問題>
- 紙をPDF化する手間
- PDFや紙の情報からシステムへ手入力で転記する手間
- フォルダ階層の複雑化による属人化と検索性の低下
ファイル名やフォルダ管理が属人化したことで、必要な帳票を探す時間が紙で運用していた頃よりも増大。 - イレギュラーへの未対応
電子配信できない取引先向けには紙帳票を作成し、手作業で郵送するなど、数通りの業務フローができてしまい、業務が煩雑化。
こうした「電子化」は、紙で運用していた頃の手順をデジタル環境に持ち込んだだけであり、真の業務効率化は実現できません。ムダな手作業を根絶し、すべての帳票業務を自動化する「プロセス変革」が必要です。
【Case 2】サービスに合わせる負担-カスタマイズ性の低いサービス導入で現場が疲弊
二つ目の失敗パターンは、導入したサービスが自社の要件に合わず、かえって業務が複雑化し、非効率に陥るケースです。
ペーパーレス化による業務効率化を目指し、外部の電子配信サービスを導入した企業で、次のような問題が発生しました。
<発生した問題> 業務フローがサービスに支配される
- 大幅な業務フローの変更が必要に
SaaS型(クラウド型)の電子配信サービスは手軽な反面、カスタマイズ性が低いものが多いため、既存の帳票データ形式、ファイル形式、さらには社内の複雑な承認フローまでをサービス側の仕様に合わせることが必要となり、その結果、業務部門は慣れない新しい手順を強いられ、現場の混乱と業務負荷が増大。 - システム開発の手間が発生
既存の帳票発行システムと新サービスを連携させるため、データの受け渡し方法やファイル形式の変換に関する新たな開発工数が発生し、導入コストと時間が当初の想定を大幅に超過。 - イレギュラーな帳票は手作業が残存
電子配信サービスに付帯する郵送機能を利用したものの、対応できる帳票の種類や通数に制限があり、特に圧着はがきなどの特殊な帳票や、特定の発送方法を求める取引先向けには対応できず、結局、自社で手作業による印刷・封入封緘を続ける無駄な工数が残存。
この事例が示すように、安易なSaaS導入は、既存の業務フローや多様な取引先の要件に対応できず、かえって業務を複雑化させます。
ペーパーレス化を成功に導き、真の効率化を実現するためには、自社の業務を大きく曲げるのではなく、要件に合わせて柔軟な設計ができるカスタマイズ性、電子配信から特殊な郵送まで幅広いニーズに対応できる豊富な機能、そして既存システムとシームレスに連携できる強みを持ったサービスを選ぶことが重要となります。
ペーパーレス化を成功させるための重要なポイント
上記のCase1,2でご紹介した失敗事例は一部ですが、他にも検討すべき事項が数多くあります。
ペーパーレス化を検討する前に、いくつかの注意点を確認しておきましょう。
- 業務プロセスの壁
---ペーパーレス化することで変更になる対象の業務範囲は明確か?
Case1でご紹介した通り、電子化をしただけでは、ペーパーレス化による業務効率化のメリットは得られません。ペーパーレス化による業務プロセスの変革のイメージを明確にし、業務効率化を図ることが重要です。 - サービス仕様の壁
---サービスの仕様は自社の要件を満たしているか?
Case2でご紹介した通り、外部サービスを利用する際には、サービスの仕様を事前に確認し、自社の要件を満たしているか確認する必要があります。具体的には、電子化可能な帳票の種類、帳票データの連携方法、配信可能な帳票数、電子帳票と郵送帳票の切り分け方法などがあります。
これらの要件を事前に社内で洗い出し、ニーズに沿った外部サービスを使うことで、導入後のギャップを低減することが可能です。 - 文化・意識の壁
---現場の理解と協力は得られているか?
ペーパーレス化は、システム導入といった技術的な側面だけでなく、長年の「紙を使う文化」を変える意識改革が不可欠です。
導入側のトップダウンの指示だけで進めようとすると、「紙のほうが便利・安心」と考える現場からの協力が得られず、結果として電子データと紙の両方が存在する「二重管理」の状態を招き、かえって業務が煩雑化します。
現場の意見を聞き、現場にとってのメリット(例:探す時間の削減、リモートワークの実現)を具体的に示し、段階的な教育やトレーニングを通じて、新しい働き方への抵抗感を払拭することが重要です。 - リスク管理の壁
---法的要件・セキュリティ要件をクリアしているか?
すべての紙の書類を安易に電子化することはできません。電子帳簿保存法や各種規制、セキュリティ基準を遵守する必要があります。
領収書や契約書など、法律でスキャナ保存や真実性の確保が求められる書類について、要件(タイムスタンプ、解像度、検索機能など)を満たさずに電子化を進めてしまうと、後々税務調査などで問題となるリスクが生じます。
法律で定められた要件や、企業独自のセキュリティ基準(アクセス権限、バックアップ体制など)を事前に洗い出し、システムがそれらの要件を確実に満たしているかを確認することが必須です。 - データ活用の壁
---必要な情報が「データ」として活用できるか?
単に紙の「画像」として保存するだけでなく、将来的なデータ活用を見据えた形式で電子化を進める必要があります。
スキャンしたPDFデータが画像で、テキスト情報(文字)として認識されていない状態(OCR処理をしていない)の場合、検索機能が使えないだけではなく、他システムへのデータ連携や集計・分析に活用できず、情報の利便性が低下します。
電子化の初期段階で、OCR(光学的文字認識)機能や、後続のシステム(会計ソフト、BIツールなど)が読み込めるデータ形式(CSVなど)で出力できる仕組みを前提とすることが、データ活用の第一歩となります。
このように、事前に確認すべき事項は多岐に渡ります。
これらの要素をよく検討することでペーパーレス化の成功を掴むことができるでしょう。
ペーパーレス化なら「まるっと帳票クラウドサービス」がおすすめ
ペーパーレス化の失敗事例や注意点をご紹介してきましたが、ペーパーレス化をすることは業務効率化に大きく貢献します。
そこで、失敗しないサ-ビスとしておすすめなのが、「まるっと帳票クラウドサービス」です。
<まるっと帳票クラウドサービスとは>
「まるっと帳票クラウドサービス」は、データ加工から帳票生成、電子化、Web配信、郵送までをワンストップで提供する、SaaS型の帳票プラットフォームです。
既存システムからのスムーズな移行により、導入負荷を大幅に軽減。電子帳簿保存法などの法的要件にも準拠しており、安心してご利用いただけます。
また、あらゆる帳票に対応できる柔軟性と、豊富なカスタマイズ性も大きな特長です。
帳票データの連携も驚くほどシンプルです。
指定のフォルダに帳票ファイルを配置しスクリプトファイルを実行するだけでアップロードが完了します。
面倒な仕分け作業は一切不要で、送り先ごとの振り分けから、「電子配信」と「郵送」の自動切り分けまで実現します。
これらの特長により、サービスを導入するだけで帳票DXを推進でき、簡単に業務プロセスを最適化することができます。
<まるっと帳票HPリンク>
https://marutto-chohyo.unirita.co.jp/
まとめ
本コラムで見てきた通り、真のペーパーレス化とは、単に紙をなくすという「手段」で終わらせるのではなく、電子化された情報を活用し、無駄な承認ステップや手入力作業といった非効率なプロセスを根絶する業務プロセスの「変革」を行うことが求められます。これにより、企業は次のような本質的な効果を得られます。
1.業務のスピードと質の向上
手作業の削減と情報の検索性向上により、コア業務に集中できる時間が増え、生産性が飛躍的に向上します。
2.経営判断の迅速化
情報がデジタルデータとして一元管理されるため、リアルタイムで正確な集計・分析が可能となり、経営判断のスピードと精度が高まります。
3.リスク管理の強化
データが一元管理され、アクセス権限が整備されることで、紛失や情報漏洩のリスクが低減し、コンプライアンス遵守に繋がります。
真のペーパーレス化を成功させるには、「自社の多様な業務フロー」や「特殊な取引先ニーズ」を柔軟に満たし、既存システムとシームレスに連携できるサービス選びが極めて重要です。
失敗事例に陥ることなく、貴社の業務を飛躍的に改善するために、この機会にぜひ、業務プロセス全体のアウトソーシングと柔軟なカスタマイズが可能なソリューションの検討を始めてみてはいかがでしょうか。
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執筆者情報

小柳 晶(こやなぎ あきら)
株式会社ユニリタ セールスプランニングディビジョン
ユニリタの前身である(株)ビーエスピーに開発者として入社。自社プロダクトの開発、自社製品周辺のシステム構築、受託開発のPM、セールスエンジニアを経験し、特に帳票業務運用に精通。電子帳簿保存法対応やペーパーレス化、印刷業務の効率化などシステム構築だけでなく、その先の運用を見据えた幅広い業務改善を100社に及ぶ企業に実施。現在は帳票プロダクトのクラウドサービス化企画に従事する傍ら、帳票運用や運用改善のコラム執筆・セミナー登壇も行っている。





